文化的景観にはどんな遺産があるのでしょうか。
自然と共に作り上げた素晴らしい景色とは?
世界に認められている遺産をみてみたいと思います。
【文化的景観】にはどんな遺産があるのか
文化的景観は、1992年に採択されました。
人間が自然と共に作り上げた景観で、3つのカテゴリーからなります。
意匠された景観・有機的に進化する景観・関連する景観
文化的景観には次の15件があります。
1:紅河ハニ族棚田群の文化的景観
2:普洱(プーアル)の景邁山古茶林の文化的景観
3:キューバ南東部におけるコーヒー農園発祥地の景観
4:メイマンドの文化的景観
5:ラヴォー地域のブドウ畑
6:クラドルビ・ナド・ラベムにある式典馬車用の馬の繁殖・訓練地の景観
7:オリーヴとワインの土地・バッティールの丘:南エルサレムの文化的景観
8:ビニャーレス渓谷
9:聖山スレイマン・トー
10:タウリカ半島の古代都市チョーラ
11:トンガリロ国立公園
12:シンガポール植物園
13:ムスカウ公園/ムジャクフ公園
14:リオ・デ・ジャネイロ:山と海に囲まれたカリオカの景観
15:英国の湖水地方
それぞれの文化的景観とキーワード
文化的景観として世界に認められている世界遺産ですが、そのどこにも行った事がありません。
私が知っていたつもりの世界遺産は、ほんのごく有名な場所のみで、ほとんどの場所が知らない所ばかりです。
今回はどんな所が有名なのか等、キーワードと一緒に簡単にみていきたいと思います。
紅河ハニ族棚田群の文化的景観
中国にある文化遺産で2013年に登録されました。
登録基準は、(ⅲ)(ⅴ)です。
ハニ族の棚田は、独自の灌漑システムを持っており、1300年にもわたって棚田とその伝統的な生活を守り続けていました。
「森林」「水系」「棚田」「村」の4つの要素からなる循環型灌漑システムは、年間の降雨量を利用し、山頂から用水路を伝って、上段から下段にながれ、棚田を潤してきました。
ハニ族にとって森林は神さまが宿る神聖な地。
人間が手を加えたことによって美しい景色を見ることが出来るって素敵ですね。
普洱(プーアル)の景邁山古茶林の文化的景観
こちらも中国にある文化遺産。2023年に登録されました。
登録基準は(ⅲ)(ⅴ)。
10世紀以降、プーラン族とタイ族によって伝統的な方法でお茶の栽培が行われてきました。
プーアル茶は、あの懐かしいCMでおなじみの爽健美茶を思い出すのですが、プーアル茶のみで飲んだ事がないので、興味があります。
こちらは、自然林の一部の樹木と低木を間引きして、そこに茶樹を植える方法で、亜熱帯モンスーン気候に合わせて作られたものです。
彼らは、精霊が茶畑や動植物に宿るとする茶祖信仰を持っていました。
キューバ南東部におけるコーヒー農園発祥地の景観
キューバ共和国の文化遺産で2000年に登録されました。
登録基準は(ⅲ)(ⅳ)
19世紀にキューバで初めてのコーヒー農園の跡です。
19~20世紀にかけてのスペインの植民地におけるプランテーション(取引価値の高い単一作物を大量に栽培)によるコーヒー栽培です。
開拓当時のコーヒー農園の農業形態を残す場所は世界でもここしかないそうです。
コーヒーと聞くと何とも言えないあの良い香りが思い出され、想像していると飲みたくなってきます。
メイマンドの文化的景観
イラン・イスラム共和国による文化遺産で、2015年に登録されました。
登録基準は(ⅴ)。
イラン中央山脈南端にあるメイマンドの村で、半乾燥地帯における自給自足の生活。
彼らは、山の上で放牧を行い、春と秋は一時的な住居で冬の間は渓谷へと降り、洞窟住居で暮らします。
これらの住居を中心とした彼らは、家畜ではなく人間が移動する独自の生活様式として伝えられています。
寒さをしのぐには充分だったのかなとか考えてしまいます。
ラヴォー地域のブドウ畑
スイスの文化遺産で2007年に登録されました。
登録基準は(ⅲ)(ⅳ)(ⅴ)です。
ラヴォー地域では、カトリック修道会のベネディクト会とシトー会の指導で、11世紀からワイン生産が続いています。
レマン湖沿いに沿うブドウ畑は、自然だけでは見られない人が手をいれた事によって美しい景色となった景観です。
美味しいブドウと自然が生み出す景色も見てみたい。
クラドルビ・ナド・ラベムにある式典馬車用の馬の繁殖・訓練地の景観
チェコ共和国の文化遺産で、2019年/2021年範囲変更となりました。
登録基準は(ⅳ)(ⅴ)です。
1579年に皇帝ルドルフ2世によって、宮廷馬飼育場に指定されて以来、ハプスブルク家の儀礼用馬車馬クラドルバー種の繁殖と訓練に特化しています。
フランス式庭園設計に基づく中央路や水路、並木道、シンメトリー(左右対称)構造や田園風健と調和されている所も見どころになっています。
オリーヴとワインの土地・バッティールの丘:南エルサレムの文化的景観
パレスチナ国の文化遺産、危機遺産で2014年に危機遺産登録されました。
登録基準は(ⅳ)(ⅴ)です。
石造りの段々畑が続く渓谷の景観があり、野菜を作るための灌漑を備えた畑の他、乾燥した土地ではブドウやオリーブの木が栽培されている。
灌漑はこの地に独特な景観を生み出すとともに、水を利用した農業の持続可能性も示している。
イスラエルがこの地に分離壁の建設を計画していることなどから、緊急的登録推薦で登録されました。
ビニャーレス渓谷
キューバ共和国の文化遺産で1999年に登録されました。
登録基準は(ⅳ)
キューバ最先端のビニャーレス渓谷はモゴーテ(断崖)と呼ばれる石灰岩の岩山が点在する渓谷に、伝統的な農業風景が広がる地域。
葉タバコの産地としても有名です。
聖山スレイマン・トー
キルギス共和国の文化遺産として2009年に登録されました。
登録基準は(ⅲ)(ⅵ)
スレイマン・トーは、長年にわかって、シルク・ロードの旅人にとって灯台の役割を果たした聖山。
2つのモスクがあり、民間信仰とイスラム教信仰が混在し、宗教的儀礼が行われた場所も多いです。
タウリカ半島の古代都市チョーラ
ウクライナの文化遺産で2013年に登録されました。
登録基準は(ⅱ)(ⅴ)です。
クリミア半島の南端にあるケルソネソスにある紀元前5世紀にドーリア人によって築かれた古代ギリシャの都市遺跡。
チョーラといわれる等分に長方形に区画された農地も含まれています。
トンガリロ国立公園
ニュージーランドの複合遺産で1990年/1993年範囲拡大で登録されました。
登録基準は(ⅵ)(ⅶ)(ⅷ)です。
1894年にニュージーランド初の国立公園にしていされました。
トンガリロ山、ナウルホエ山、ウアペフ山の3つの活火山があります。
先住民マオリの聖地として守られてきました。
シンガポール植物園
シンガポールの文化遺産として2015年に登録されました。
登録基準は(ⅱ)(ⅳ)です。
1859年イギリス植民地時代に設立された植物園の景観デザインの歴史と変遷を示す文化的景観。
ゴムのプランテーション
ムスカウ公園/ムジャクフ公園
ドイツおよびポーランドの文化遺産として2004年/2024年範囲変更として登録
登録基準は(ⅰ)(ⅳ)。
ドイツとポーランドの国境を流れるナイセ川両岸に広がるムスカウ公園(ドイツ)とムジャクフ公園(ポーランド)は19世紀にムスカウ侯爵によってつくられました。
もともとひとつの公園でしたが、第二次世界大戦後に国境で分断
この地に自生する植物と自然の地形を生かしたイギリス式庭園が周囲の農村と解け込み、景観を生み出しています。
リオ・デ・ジャネイロ:山と海に囲まれたカリオカの景観
ブラジルの文化遺産で2012年に登録されました。
登録基準は(ⅴ)(ⅵ)。
ブラジル南東部にあるリオ・デ・ジャネイロ。急峻な大とコパカバーナに代表される海岸にはさまれた独特な都市景観が特徴。
コルコヴァードの丘には1931年のブラジル独立100周年を記念してキリスト像が建設されました。
テレビなどで、映し出されるので見た事がありますが、ブラジルを代表する有名な建物で行ってみたい場所です。
英国の湖水地方
最後は英国の湖水地方文化遺産で2017年に登録されました。
登録基準は(ⅱ)(ⅴ)(ⅵ)になります。
湖水地方と聞くと真っ先に思い浮かぶのがピーターラビットです。
イギリスのロンドンからは少し離れているので、なかなか個人では行きにくい場所にあるのですが、自然と人間の営みが調和された美しい景観へは訪れてみたい場所になります。
自然と調和された文化的景観だけあって、公園や植物園が多かったり、茶畑やブドウ畑など自然を活かした方法で、昔から伝統を守りながら作られているところはどれも一度は訪れて観たくなる場所でした。
どの遺産も、このまま美しいまま残していきたい遺産だなと思います。
参考にさせて頂いたもの