霧が深いロンドンの街にある夫婦が暮らしていました。
夫に、最近物忘れや盗癖が多いと指摘された妻は自分がおかしくなったのかもしれないと思い込み精神的不安に陥ります。
けれども、それは夫がそう言い聞かせることで妻を精神的に追い込んでいたのでした。
夫が握る秘密とはいったい…
19世紀イギリスを舞台にしたミステリー映画【ガス燈】
この映画で、イングリッド・バーグマンがアカデミー主演女優賞とゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞。
アメリカで1944年5月4日、日本では1947年6月3日に公開されました。
19世紀イギリスを舞台にしたミステリー映画【ガス燈】あらすじとネタバレ感想
ネタバレあり
1875年ロンドン
物語はロンドンのソーントン広場で、名歌手だったアリス・アルクィストの葬儀から始まります。
死因は絞殺でしたが、犯人は分かっておらず、叔母の死を悲しむ姪のポーラ・アルクィストは、悲しみを忘れるため、知人からイタリアへ留学するよう勧められます。
そこで知り合った作曲家のグレゴリー・アントンと恋をし、声楽に身が入らないままコモ湖へと1人、気分転換へ向かう事に。
途中、客車でベッシー・スウェイツと名乗るミステリー好きの年配女性からたまたま、叔母の事件を聞き、再び悲しみと不安にかられます。
(どこの国でもミステリー好きのおばちゃんはいるんだなぁ~)
そんなポーラをコモ湖の駅で待っていたのは、グレゴリーでした。
悲しみに暮れるポーラを言葉巧みに操り、グレゴリーはロンドンにある問題の家で結婚生活を営むことに成功します。
(犯人もまだ捕まってないのに亡くなった叔母の家で住もうって思えへん…)
ロンドンの新居には、メイドにナンシー・オリヴァー、料理人にエリザベス・トンプキンスを雇うのですが、ポーラを通さず必ずグレゴリーを通す事を約束させられます。
そんな中、隣人にイタリア旅行の客車で出会ったベッシー・スウェイツがおり、何かと家の事情を知りたがっているのでした。
(おせっかいのおばちゃんだけど、ちょっと役にたってるところが可愛い)
暫くして、ポーラは夫から貰ってハンドバックに入れたはずの大切なブローチを無くしたことに気付きます。
夫から代々からの大切なブローチだと言われていたこともあり、焦るポーラ。
無くしたことをなかなか言えずにいるのでした。
(何もなければ、そんなの言えばいいのにって思うけれど、自分に自信がなかったり、委縮したりすると言いだせないんだ…)
ある日、夫と2人外へ出かけたポーラの姿をきにかける男性。
彼はブライアン・キャメロンというロンドン警視庁の総監の助手で、少年時代に憧れていた名歌手アリスの殺人事件に非常な関心を持っていたのでした。
(アリスのサイン入り手袋の片方をプレゼントされた少年も彼です)
ポーラはその後も家庭内での紛失が続き、夫のグレゴリーはポーラが自分のしたことを少しも記憶していないといって、平気で嘘をつき、彼女を不安にさせるのでした。
そんな彼女でしたが、欠席するだろうと思っていたダルロイ夫妻主催の舞踏会に出席します。
そこでも夫の時計が知らない間にハンドバッグに入っていて、取り乱してしまい退出することに。
その舞踏会にはポーラと話たがっていたブライアンも出席していました。
(この時の様子もしっかりチェックしています)
夫のグレゴリーは、恥をかいたとポーラに怒りをぶつけます。
そして精神病で死んでいった彼女の母と同じように(実際は母親の死は違うのにもかかわらず)ポーラもまた精神が衰えて死ぬだろうと脅します。
ポーラは夫のグレゴリーの言葉を気にしながらも、一人不安な日々を送っていましたが、次第に自分の精神状態に自信を失っていき、夜ごとに薄暗くなるガス燈の光や、天井から聞こえる物音に神経を追い詰められていくのでした。
前々からグレゴリーが怪しいと睨んでいたブライアンは、警官のウィリアムの協力の元、グレゴリーを監視していました。
見回りの警官ウィリアムズはメイドのナンシーと親しくなり、奇怪な夫グレゴリーの様子をブライアンに報告します。
ポーラの身の危険を感じたブライアンは、グレゴリーの外出中を狙って、ウィリアムズにナンシーを連れ出させ、エリザベスの制止を振り切ってポーラを訪ねていきます。
(こういうするどい人に憧れる。)
部屋のガス燈が暗くなったのを確認したことで、ポーラだけでなく、自分もガス燈が暗くなったことが分かったと伝え、ポーラの信頼を得ると、グレゴリーの机をこじ開けて、幻覚と言われた亡き叔母への手紙を発見します。
そして筆跡から夫のグレゴリーが書いた物であることを確信。
(物語を見ていると分かっていても、やっと気づいてくれたと胸がスッキリします。)
ブライアンは、ポーラが決して精神に異常をきたしているのではなく、夫のグレゴリーの策略にすぎないこと、また夜ごとに暗くなるガス燈の光や天井から聞こえる足音も、夫のグレゴリーが叔母の遺品が置かれた閉鎖された屋根裏の部屋で、殺害の目的だった宝石を探すためだと推察します。
(なんにでも勘がいい人、物事を良く見ている人のようになりたいと思う)
ブライアンはグレゴリーが戻るのを待ち伏せるために家を出て行きますが、目的の宝石を見つけたグレゴリーは屋根裏から直接家に戻ってくると、机が荒らされていることに気付き、理由をはっきり応えないポーラに怒りをぶつけます。
さらにエリザベスも(ブライアンからポーラを守るように言われていたことから敢えて)知らないと応えたためポーラは不安になります。
そこにブライアンが現れ、グレゴリーを追い詰めると、グレゴリーは天井裏に逃げ込み、それをブライアンは追います。
さらにウィリアムズも加わり、格闘の末にグレゴリーは椅子に縛り付けられます。
ポーラはグレゴリーと2人きりで話がしたいとブライアンとウィリアムズを外に出します。
グレゴリーは甘い言葉をささやき、ポーラに縄を切るように言いますが、ポーラは正気をなくしたふりをするなどして、グレゴリーにこれまでの自分への仕打ちに対する恨みをぶつけると、ブライアンにグレゴリーを連行するように伝えるのでした。
別れ際、グレゴリーは宝石に取り憑かれていたことをポーラに告げます。
(何かに取りつかれると周りが見えなくなるということも怖い)
最後にブライアンとポーラの将来を暗示する様子を目撃したスウェイツ夫人の驚く姿で物語は終わるのでした。
追い詰められていくイングリッド・バーグマンの不安にさいなまれている感がとても伝わってくる演技で、アカデミー賞をもらったのが納得できる作品でした。
それにしても、人間というのは追いつめられていくことで精神が病んでいく姿は他人事ではないと思いました。
自分が正しくても、相手との上下関係や平気で嘘をつかれたりと条件が揃うことで誰もがかかってしまう恐ろしいマインドコントロールだと思いました。
古くて白黒映画ですが、イングリッド・バーグマンの美しさは見ていてうっとりするものでした。
19世紀イギリスを舞台にしたミステリー映画【ガス燈】登場人物
ポーラ・アルクィスト・アントン (イングリッド・バーグマン)
絞殺された名歌手アリス・アルクィストの姪。
グレゴリー・アントン (シャルル・ポワイエ)
ポーラの夫、作曲家でピアノ弾き。
ブライアン・キャメロン (ジョゼフ・コットン)
ロンドン警視庁の総監の助手。
ベッシー・スウェイツ(メイ・ウィッティ)
近所の老婦人。
ナンシー・オリヴァー (アンジェラ・ランズベリー)
メイド。
エリザベス・トンプキンス(バーバラ・エヴェレスト)
料理人。耳が遠い。