自分が正しいと思ってやっていた事は、本当に正しかったんだろうか。
価値観の変化を主人公が自分の半生を回想していく映画【日の名残り】。
主人公のスティーブンをアンソニー・ホプキンス、メイド頭をエマ・トンプソンが演じています。
【日の名残り】あらすじ
1958年のイギリス。
アメリカの政治家ルイス(クリストファー・リ―ヴ)の家に仕えるベテランの執事スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)はその昔、ダーリントン卿(ジェームス・フォックス)に仕えていました。
ある日、当時のメイド頭ケントン(エマ・トンプソン)から20年ぶりに手紙を受け取り、彼女に会いに行く事になります。
道中、車を運転しながら当時を回想するスティーブンス。
時は1939年9月。
イギリスとフランスがドイツに宣戦布告して大戦に突入する前、ダーリントン卿の屋敷には各国から主要人物が集まり、国際会議が開かれていました。
その時一緒に働いていたのが、執事のスティーブンスとメイド頭のケントン。
ストイックで仕事熱心なスティーブンスは、主人を絶対とし、何かとケントンと衝突しながらも、仕事を廻していました。
そんなある日、ダーリントン卿はナチスの思想に影響され、ユダヤ人メイドを解雇します。
そのことで、スティーブンスはケントンと激しく対立しますが、その後和解することで、2人は互いに惹かれ合っていきます。
けれども、仕事一筋のスティーブンスは、自分とケントンの気持ちに気づかないふりをし、そのまま気持ちを伝えずに過ぎていきます。
しびれを切らしたケントンは、別の男と結婚するため、スティーブンスの元を去っていったのでした。
それから20年。
ケントンと再会したスティーブンスは、職場復帰をお願いするも、娘の妊娠を理由に、ケントンは断ります。
帰り際、ケントンは自分の人生を振り返り、間違いだったと口にします。
お互いに失われたものを取り戻すことはできないまま別れ、元の生活へと戻っていくスティーブンスなのでした。
【日の名残り】登場人物
ジェームズ・スティーブンス:アンソニー・ホプキンス
「何なりとお申し付けを」
プロ意識は父親譲り。
新聞1枚1枚にアイロンをかけ、こげたトーストに気づくとすかさずポケットに入れる徹底ぶり。
(私だったら、アイロンで新聞に穴をあけてるな)
主人に仕え、自分の考えはあっても決して意見は言わない。
(プライドと責任がすごすぎる)
ミス・ケントン:エマ・トンプソン
スティーブンスの気持ちに気づいているのか、気づいてないふりをするのか傍から見ててもイライラするので、当人だともっとイライラするだろうと思います。
(はよ、言うて)(好きなん?好きちゃうの?)(もうどっちやねん)
それでも、毎日のように庭に咲いている花を摘んでスティーブンスの部屋に飾る健気な女性だなぁと思いました。
ダーリントン卿:ジェームズ・フォックス
朝食を済ませると、ツイードスーツに身を固め、どんな時でも常にバシっと決めている所が貴族らしい。
良かれと思ってやっていたことは、実はナチスに利用されていました。
貴族は所詮政治に関してはアマチュアだというルイスの言う通り、結末は悲惨なものでした。
ルイス:クリストファー・リ―ヴ
ダーリントンホールの現主人
【日の名残り】作者:カズオ・イシグロ
長崎生まれ。1960年に両親とともにイギリスへ移住。
【日の名残り】で1989年にイギリス最高文学賞ブッカー賞受賞、2017年にノーベル文学賞を受賞。
主な作品「わたしを離さないで」「クララとお日様」
jibunnnoikikata.hatenablog.com
【日の名残り】:感想
人生とは、幸せとはいったい何だろうと、思います。
世界情勢のなか、もうすでに輝いていた時代はなくなり、それでも当時を忘れられないままでいる、そしてその想いを忘れず、思い出と一緒に自分も消えていきそうな姿をどことなく薄暗い感じで表現されていました。
貴族も執事もある時から自分たちはいったいどこに向かっているのだろうとわからないまま、その関係を微妙なままにしながらきたのかもしれません。
また恋心を隠すスティーブンスの本当の気持ちが分かってるのか分からないのか、自分の感情を押し殺す表情はピカイチでした。
特にエマ・トンプソンが、ホプキンスの部屋で、読んでいた本を奪い取った時の表情を読み取ろうとしたけど、無理でした。(演技上手すぎるわぁ~)
そこまで自分の恋心をさとられないようにしないといけなかったのか?ということに疑問だし、エマ・トンプソン演じるケントンの気持ちが悲しかったです。
また、カーディナル(ダーリントン卿が名付け親となった青年)を演じるヒュー・グラントだったと最初気づきませんでした。
あの髪型だな…それでもやっぱりカッコよかったですけど(オホホ)
最後に、ルイス役のクリストファー・リ―ヴ。
もう初代スーパーマンにしか見えませんでしたが、貴族は政治においてアマチュアという姿の時はかっこよかったです。(よー言うた!みたいな感じ。役柄ですけど)
ベテラン俳優陣が多い2時間14分の映画でしたが、長さは感じられませんでした。
とにかく最後まで人生とは分からないもの。
「あの時、違う選択をしていたら…」
過ぎてみないと分からないもの。気づかないものです。
現題「The Remains of the Day」日が暮れる前のひととき=1日で最も素晴らしい時間
のように日々の生活の中、自分の気持ちに嘘をつかず、その瞬間を大切にしていく事は大事だと思いました。