ガネしゃんです。ご覧頂きありがとうございます。
前回「アーモンド」という本を読みました。
『アーモンド』が人間という存在そのものへの問いかけだとすれば、
『三十の反撃』は、どんな大人になるかという問いへの答えである。
ソン・ウォンピョン
アーモンドの物語が印象に残ったので、「三十の反撃」のタイトルとあらすじをみて、(面白そうな本だな)と思ったのと、作者が描く非正規職員の心情を、どう表現されるのかが気になって、読んでみました。
作者紹介
著者
ソン・ウォンピョン
ソウル生まれ。西江(ソガン)大学で社会学と哲学を学び、韓国映画アカデミーで映画演出を専攻。多数の短編映画の脚本、演出を手掛け、「シネ21映画評論賞」「科学技術創作文芸・シナリオシノプシス部門」を受賞。2020年には長編映画監督作品「侵入者」が公開された。文壇デビュー作となった長編小説「アーモンド」は、第10回チャンビ青少年文学賞を受賞。続いて出版された本作「三十の反撃」は第5回済州4・3平和文学賞を受賞している。
訳者
矢島暁子(やじまあきこ)
学習院大学文学部卒業。高麗大学大学院国語国文学科修士課程で国語額を専攻。
訳書に「アーモンド」の他「チョ・ナムジュ」「ミカンの味」等がある
あらすじ
1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、三十歳になった非正規職員のキム・ジヘ。88年生まれに一番多い名前「ジヘ」と名付けられた彼女はその名の通り、平凡を絵に描いたような大人になっていく。大企業の正社員を目指すジヘの前に現れたのは、同じ年の同僚ギュオク。彼の提案する社会への小さな反撃を始めることになったジヘは、自身を見つめ直し、本当にしたかったことを考えるように。そして、ついに「本当の自分」としての一歩を踏み出すことになる。
感想
主人公は30歳の非正規職員。
日本のどこにでもいる「平凡」な人。
韓国も日本と同じように「平凡」な人が多い。
そんな普通の主人公がある同僚と出会う事で、彼女自身の考え方に変化が起こります。
彼女の胸の内がとてもよく分かります。
非正規職員はどんなに一生懸命頑張っても正職員との壁があること。
立場が弱い者は、立場の強い者に対して意見を言えないこと。
言うと次の契約更新をしてもらえなくなるから。
仕事が出来なくても上司に気に入ってもらえば会社に残り、仕事が出来ても上司に煙たがられると職を失う理不尽な世の中。
それでもって「自分の努力が足りないからだ」と錯覚がおき、それが当たり前の様になっていること。
文句も言えず、言う機会も与えてもらえない社会となっていること。
そんな普通の主人公の、「誰にも分かってもらえない気持ち」がとてもうまく表現されていて、読者の気持ちを掴んでいるなぁと思いました。
それでも主人公やその周りの「普通の人」たちは、おかしい事はおかしいと言おうと立ち上がっていきます。
「あなたが本当にやりたい事って何ですか?」と聞かれた時に、夢と希望を持って答えられる人は素晴らしいです。
平凡であっても、それが自分の望む道であれば迷わず前に進めばいいんだよ。と背中を押して勇気を与えてくれる1冊だなぁと思いました。
そして、「アーモンド」「三十の反撃」を読んだ後に残る清々しさと、自分の気持ちに正直にさせてくれる作者のファンになりました。